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そうして、俺はまた助手席に乗り込み、岩田が車を運転して、俺たちは蒲生家を出て行った。
「なんか、坂井警部もですけど、奥さんも気に入られてますね。なんでですか?」
岩田が訊ねてくると、俺は横目で岩田を見て、
「知るか。俺は気に入られてほしくないのに、何故か気に入られる。愛想を振りまくタイプでもないし、甘え上手でもない。話すことは苦手だっていうのに、何故か好かれるんだよね。不思議」
と答えて微笑むと、岩田は「ふぅん」と答えてチラッと俺を見た。
「なんだよ」
「いえ。…結婚して、ずーっとそんなふうに仲良くできるのって、なんでなんだろうって」
「は?あれ?岩田も結婚してんだろ?大恋愛で結婚したって聞いてるぞ」
俺が笑って言うと、岩田は「うーん」と唸って首を傾げている。
「大恋愛って…大袈裟。主人がとある財閥の息子で、出会った当時、婚約者がいたんです。もちろん私は諦めようと思ってたんですけど、彼は私のことを好きだと言ってきて…。2人で何度も話し合ったけど、付き合えないって思って、別れたんです。そしたら、彼は結婚式当日にドタキャンして、仕事中だった私を迎えに来て、みんなが見てる前でプロポーズされたんです」
「おおぉ。そんなドラマみたいなことが!たしかに大恋愛じゃん」
俺は感心して言うと、岩田は苦笑して「そうですねぇ」と呟いた。
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