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「終わったね。初七日まで」
お義姉さんはそう言って、熱いお茶をすすった。お義父さんも両手で湯呑み茶碗を持って、
「みんな、ご苦労さん。雪子さんも、わざわざ東京から来てもらって、申し訳ないね」
と少し赤い目をして言いながら私を見ると、私は頭を横に振って、両膝をついた。
「いえ。とんでもないです。私にできることもなくて…お役に立てず、申し訳ありません」
「そんなことないよ。雪子さん。来てくれてありがとう」
お義姉さんはそう言って、苦笑して私を見つめていた。肩につくほどのパーマをかけた髪を、クシャッと揉むようにして深いため息をついている。お義姉さんのこんな元気のない顔は、見たこともない。卓さんもネクタイを床に置いて、
「まさか…病気になった親父が回復して来たと思ったら、お袋が突然死んじゃうなんてさ。想像もしなかったよ」
と呟くように言うと、お義姉さんも頷いてタバコを一本口に咥えた。電子タバコだけど。
「ほんとにな。…俺が先にくたばると思ったのに。あんなにいつも元気で、病気知らずだった久美が、先に死ぬなんて、誰も想像してないよな」
そう言ったのは、お義父さんだ。悲しげに目を閉じて、ゆっくりお茶を飲んでいる。
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