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「雪子…家のこと色々任せっきりで悪かったな」
優しい眼差しで理が言うと、私は頭を横に振った。
「全然。お義姉さんも卓さんもいてくれたわ。お義父さんも気を遣ってくれて。だから、私は大丈夫。それより、理も。喪主としてのお務め、お疲れ様でした」
「うん。やっと終わった…疲れたよ」
理は深いため息をついてダイニングの椅子に座ると、私はまた湯呑みを持ってきて、急須からお茶を注いで理に渡した。お義父さんが背もたれから背中を離して理に向き直り、
「理。俺が本当は施主を務めなきゃなんないのに、全部任せて悪かったな」
と真剣に言うと、理はお茶を飲みながら頭を横に振ってお義父さんを見た。私は理の後ろに立って、肩に手を掛けていた。
「いいよ。親父まで倒れられたら、やってらんないし…せっかく体力戻って来たとこだし、親父は無理すんな。そのために俺が来たんだ。これくらいしか出来ないし」
「理。…しっかりしたねぇ」
そう言うのは、お義姉さんだ。卓さんも、ウンウンと頷いている。
「俺も、まぁ、これでも長男だもんな?姉貴がやっても良かったんだぞ」
「うーん。私には無理…。わけわかんない。お金のこととか、何すればいいのかとか」
「そんなの俺だってわかんねぇよ。でも、ほら、葬儀のこととか教えてくれるアドバイザーがいるんだ。分かんないことは聞けたし。慣れてる人なんかいねぇよ」
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