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異世界で出会った2人の話 本編
(あれ…、もう、朝……?)
閉じた瞼に明るい光が当たって、薄オレンジの色が瞳を撫でる。
(起きなきゃ…仕事……って、今日は久しぶりの休みか…)
連勤&徹夜の甲斐あってやっと手にした久しぶりの休日。
もう少し寝ようと寝返りを打つと、布団の手触りが違う。
(ん…なんか、チクチクする……)
微かに目を開けると緑色が広がっているのがぼんやり見える。
自室のベッドの色は青色だったはず。と不思議に思っていると、鳥の囀りが聞こえた。
(鳥…?いつもカラスくらいしか鳴かないのに…)
住んでいるのは都内のボロいアパート。
囀る鳥が飛んでいるどころかここ数年見かけるのはカラスだけだ。
そして何よりも、風が吹いている。
(……いや、え???)
いくらボロいアパートとはいえ、壁や天井に穴が空いている訳ではない。
流石に何かおかしいと、覚醒した脳につられて目を開いた。
「…………は?」
見渡す限り、自分の周辺を囲むかのように生えそろった木々。
横たえた体をくすぐるのは草花。
上を見れば日が差していて、この場所を明るく照らしている。
「…いや。いやいやいやいやいや、はぁ?!!」
パッと起き上がり、再度見渡すも目に映るものは変わらない。
「え…何、夢…??」
頰を強めに摘んでみる。
「痛っ!!!」
(思い切りやりすぎた…!!)
どうやら夢ではないこの非現実に、柊卯瑠【ひいらぎ うる】は茫然と空を見上げた。
「どうなってるの…?」
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