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「逃げないから。レオが悲しそうなのは嫌なの」
「…っ」
また口づける。
レオンと仲直りする時の卯瑠なりの鉄則だ。
ようは、相手に安心して話せる状況を作る、というものだ。
あなたのことを怒っていないと、わかってもらうためのキス。
頬や額に落として頭を撫でやる。そうすればレオンもおずおずと、甘えるように擦り寄ってくる。
「…お前が、俺のことを…薬で盛るような奴だと思っているなんて、思ってなかったんだ」
「でも…そういう状況にするための薬なんでしょう?だから、仕方ないのかなって」
話始める頃にはすっかりしおらしくなったレオン。
卯瑠の胸に顔を寄せて腰に腕を回し、甘えるようにくっついてそのままベッドに倒れ込む。
「俺は…そこまで、酷くない」
「そう?」
さっきまでのは?と言わんばかりに見つめればレオンは押し黙る他なかった。
「あのね、レオは女の人が苦手でしょう?だから今は仕方ないとしても、事が終わってからじゃ遅いかなって思ったの」
「…?俺のそれと今日のことの何が遅いんだ?」
キョトン、とした顔で見上げてくるレオン。
大の男とはいえ整った容姿に普段はキッと釣り上げている目と眉は情けなく下がり、こちらを伺うように見つめてくる姿は可愛いと言ったほうがしっくりくるぐらいだ。
(…これが母性か)
と、思いつつも震える心をグッと堪えて卯瑠は続けた。
「だから…その、今日私と、そのー、シちゃったら…何というか、苦手な女の人と寝てしまった!…みたいな?」
我ながら何を言っているんだ。とは思いつつも話してみると、レオンは「は?」と言いたげな顔でこちらを見る。
「お前…そんなことを、考えてたのか?」
「言ったじゃん、レオのこと考えてるって」
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