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(ひとまず思い出そう…確か昨日は休日前だからって……)
昨日の業務後、久しぶりの休みに沸いた上司と共に居酒屋で飲めや食べやした後、遅い時間に
帰宅した。疲労と満腹感からくる睡魔に、お風呂に入るのも億劫だったので明日の朝に回すことを即断した。
そして着替えることもなくベッドにダイブしたら瞼が重くなってきて…。
(…で、多分寝落ちたのよね)
ふと自分の服装を見ると昨日倒れ込んだ時のパンツスーツのままだ。
つまりは寝てから起きるまでの間に何かー何かで片付けられることでもないとは思っているーが起きてここにいた。
「……んなアホな」
非現実的過ぎる。
仮に誰かに運ばれたとしても何のために、誰が、何でここに、などなど疑問は尽きないしどうにもならない。
どうしたものかとしばらく途方に暮れていると、遠くから微かな音が聞こえた気がした。
(風の音…?いや、でもなんか違う気がする…)
ほぼ規則的な音。
その昔、ポニーを見に牧場に行った時のような…。
そう思っていると音が徐々に近づいて来る。
(え…な、なに?なに、どうしよう…)
周囲を見渡すけれど音の出所がはっきりしないので隠れようにもどこに行くべきか判断できない。
そうこうしている内にすぐそばの草藪が揺れて、そちらを振り向くとそこには馬を引き連れた人が立っていた。
鎧を見に纏い、顔がわからないような兜を被っている。身丈からするに男性だろうか。
「っ!!」
男がこちらを確認してすぐ、ビクッと体を震わせた気がした。
しかしこちらもそれどころではない。
現代にあんな鎧を装備して馬を引き連れている人などそう多くはない。
まして母国には居ないと言っても過言ではないのだから。
しばらくの沈黙。
それを先に破ったのは男の方だった。
「貴様、ここで何をしている」
「ひっ……」
ドスのきいた低い声に思わず身体が震えた。
(何をって言われても…)
「わ…」
「わ?」
「…わ、わかりま、せん」
ーーーこれが2人の出会いだった。
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