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あの出会いから数ヶ月が経った。
「ウル、行ってくる」
「はーい!行ってらっしゃいレオ!」
屋敷から出立する男、レオン・カースベルを卯瑠は笑顔で送り出した。
あの出会いの後、何を聞いても「わからない」「知らない」「ここはどこ」と繰り返す卯瑠をレオンは放置することができずに仕方なく自身の屋敷へ連れ帰った。
卯瑠の話を聞き、最初は疑っていたレオンも数日経つにつれてこれは本当に訳ありかもしれない。と思い至り、しかし帰す手段も分からないため屋敷の使用人として卯瑠を置いておくことに決まった。
当初は混乱した卯瑠だったが、持ち前の対応力ですぐ今の生活に打ち解けていく。
レオンが仕事へ向かった後、卯瑠はすでに慣れた手つきで屋敷内の掃除に取り掛かっていた。
「うーーん、流石に毎日やってると埃も出ないよね…」
毎日の掃除に慣れ切ったので効率を上げるためにはどうすべきかと考え、行動したひと月前からかなり手際が良くなったためか寧ろ暇に近くなってしまっている。
かと言って手を抜くわけでもないが、それでも時間は圧倒的に短縮されるので暇にはなる。
「うーん…後でレオの書斎行こう」
ーーー…。
掃除、洗濯、炊事の準備を終えた後、レオンの書斎へ向かった。
中の書類に変な事をしない限りは入室自由と言われているので気にせず中へ。
書斎の棚には数多くの書籍が陳列されており、その中のひとつを手に取った。
【ルードリア王国】というタイトルの本を手に椅子に腰掛けて、しおりが挟んであるところから読み始める。
ルードリア王国、とはこの国のこと。今読んでいるのは国の成り立ちや歴史、特徴が書いてある本だ。
最近はこの本で文字や歴史を学ぶのがマイブームになっている。
パラ、とページを捲ると出てくるのは女王を彷彿とさせる、王冠を被った美しい女性のイラストだ。
それを見てここに落ちて数日後のレオンの話を思い出した。
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