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「…て、こともあったなぁ」
思い出してふぅ、と息を吐く。
レオンは数多くの(一方的に与えられる)女性経験からすっかり女の人が苦手になったらしい。
外出時はよく兜を被るのもそのためだとか。
とはいえ、ここで一つの疑問が湧く。
何故卯瑠には平静でいられるのかというところ。
その疑問は、レオンが卯瑠を信じた日にもう結論付いていた。
『お前は髪が短いし小さいからな。色々と。』
…あの時、色々と、のところで胸に目を向けたレオンを思わず腹パンしそうになったなぁと思い出す。
とはいえ、この国の女性は長い髪にナイスバディ、服装はドレスやスカート、ワンピース物が多いのでそれと真反対な格好でいた卯瑠はどちらかというと見た目が男性に近い。
初見では一瞬女だと思ったらしいレオンはそれ故か、変に意識せず警戒せずにいられるのだと言う。
「まあ、今も変わらないような服してるしなぁ」
今現在、卯瑠は支給された使用人用の服を着ているのだが、それは燕尾服のような物で男性が着るタイプの服だ。
理由として、顔の良さと女性嫌いでそこそこ知れてるレオンの屋敷に急に女の使用人が現れたとあれば、周りが黙っていないと言う。
確かに数度、お客様を招いた時にも女性陣からの眼差しは暖かかったが、「使用人にならわたくしを!」と立候補する輩もいたのでなるほどなぁ。と潔く引き下がったのは言うまでもない。
「うーん…まだまだ時間あるし、今日はここまでいきたいなぁ」
ある程度見切りをつけてレオンの帰りを待つのも仕事の内だ。
そう考えながらもページをめくり、内容を理解しながら読み進めていった。
しばらく読み耽ると眠気が差して目を閉じていたようで、ハッ!と体を起こすと外も室内も真っ暗だった。
しまった…!と思ったのも束の間、屋敷内がやけに静かなことに気付く。
(帰ってきたならここに来るもんね…)
すでに何回かこの寝坊をやらかしている卯瑠。こういう日は気づくとソファの上に寝かせられているのが常であるが、今日はそれがない。
レオンは帰宅後真っ直ぐに書斎に入るので、まだかえってきていない、ということが推測される。
部屋の明かりをつけて時間を確認すると深夜であることがわかって首を傾げた。
この数ヶ月、確かにレオンの帰りが遅いことはあったがここまで遅いことは一度もなかった。
(何かあった…?いや、でもあの人騎士だって言ってたし…仕事で何かやっちゃったとか…??)
うーむ。と行き場のない疑問を巡らせていると、ドンドンドンッ!!!と外扉が叩かれた音が聞こえて慌てて書斎を出る。
ささっと身だしなみを整えてからそっと扉を開くと、そこにはレオンと同じ軍服の男が立っていた。
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