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少しして、タオルの替えを取ってこようと立ち上がった卯瑠が一歩足を出した時、ビッと服の裾を引っ張られて足を止めた。
振り向くとまだ荒い息遣いのまま、顔だけをこちらに向けて見上げてくるレオンと目が合う。
「なに?タオルの替え持ってくるから離して?」
そう言うと、レオンは少し困ったように眉を下げて、でも何も言わずにただ見つめるのみ。
何も言われないとわからないのだが、と思いつつ服の裾を掴む手を取ろうとする。
その瞬間、逆にこちらの手を掴まれて、その熱に驚いて目を見開いた。
「…?レオン?」
(何…?ここまで静かなことって今までなかった気がするけど…)
そっと、顔を覗き込むと、一瞬めを逸らした後少し視線を彷徨かせるレオン。
意図が分からずしばらく見続ける。
すると何か意を決したのか、もう一度目が合ってレオンが口を薄く開いた。
「…くれ」
「ん?なに?」
「だ、っ…から、……」
言い淀むレオンに卯瑠の頭はハテナマークでいっぱいだった。
とはいえ、汗を流す主人をこのまま放置して風邪でもひかれたらたまらない。
「もう、ちょっと行ってくるだけだから。」
と、掴まれた腕を振り払おうとした時だった。
ぐんっとその腕が引かれたかと思うと、バランスを失った体は前のめりに倒れる。
「っきゃ!」
ぼふん。とベッドにダイブしたのも束の間、ぐいっと体を引かれ、気づいた時には後ろからレオンに包み込まれていた。
一瞬思考が停止して、背中にかかる熱と響いてくる心音に気付き、慌てて抜け出そうとした。
「っ、行くな」
「?!」
すぐにレオンからの拘束が強くなり、卯瑠は苦しくこそないが身動きが取れなくなった。
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