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慣れない感触と耳元にかかるレオンの息遣いに、心臓が痛いほど跳ねだす。
「なっ、に、してんの?!はな、離しっ…!!」
「ダメだ、ここにいろ」
「んなっ?!」
(どうしたのこの人?!!)
いつもと違う様子のレオンに困惑する。
レオンは卯瑠がいるのを確かめるかのように、卯瑠の首筋に顔を擦り寄らせる。
首を掠める髪の毛のくすぐったさに卯瑠は肩をすくめた。
「れ、レオン…?」
「…違う」
「は?」
「違う、呼び方が、…あるだろう」
レオンが言いたいことはわかるが、なぜこのタイミングなのかが分からず首を傾げる。
しかしレオンに「はやく」と首に頭をグリグリされながら言われてはくすぐったくて敵わない。
「ちょ、わかっ…!レオ!レオ、くすぐったい!!」
レオと略称で呼ぶのはここに来てしばらくしてからそう呼べと言われ、2人の時はそう呼ぶように心掛けていた。
とはいえ普段はレオンと呼ぶので、呼び慣れていないためかそんなに呼ばない。
それについて特に咎められたこともないので気にしてはいなかったが、まさかこんな場面で要求されるとは思っていなかった。
当のレオンは満足したのか、頭を動かすのを止め、その代わりにピッタリとくっついて離れなくなった。
(どういうこと…?薬のせいで女なら誰でも良くなってる、とか…?)
それはそれで大問題だ。と卯瑠は青ざめる。
どこぞの令嬢とそうなってくれるのはまだいいが、自分ととなれば話は違う。
白状だと言われるかもしれないが、自分の純潔は守りたいというのが本心だ。
レオンが嫌なわけではない。この上なく容姿は完璧、騎士という職につく強さ、なんなら財力もあるし惚れない女性はいないだろう。
ただ、卯瑠は元いた世界で恋人はおらず、その分ちゃんと好きな人とそういう関係になりたいと思っていた。
だからこそレオンはダメだ。主人であるし、女性嫌い。今この場で何かあって、後日頭が覚めてからでは取り返しがつかないだろう。
「レオ、呼んだでしょ?離して…」
「離すとは言ってない」
「なんつー屁理屈…。いいから、タオル取ってくるだけ!すぐ戻るから!てかすぐそこ!!」
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