5. 不確かな日々

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5. 不確かな日々

それから俺と新田との距離感は少し変わった。 新田が俺を避けるのをやめたのだ。 授業中も、よく目が合うようになった。 廊下でも普通にすれ違う。 そう、俺も逃げるのをやめたんだ。 逆に、怪しいほど新田ばかり目で追ってしまう。 気をつけないと、勘のいい人間にはバレて しまうだろう。 俺が不純な気持ちでアイツを見てること…。 ある日、放課後。 1人で教室に残り、机に向かっている新田を 見つけた。 後ろのドアから近い、廊下側の席に ポツンと1人。 少し前なら避けて通り過ぎる場面だ。 「何してんだ?」 教室のドアから声をかける。 新田は、はっと顔を上げてこちらを見た。 「…試験勉強ですけど… ウチ帰ると 寝ちゃうか、ゲームばっか やっちゃうんで」 「…なるほどな」 俺はさりげなく近づいて行って 新田の机の上を覗く。 俺が来るのを期待していたかのように 英語の教材が広げられていた。 「そういえば英語はいつも平均点ギリギリだな」 他の教科はもう少し良くできる。 国語や世界史なんかは特に良い。 「英語は 俺の中で優先順位が低いんだ…」 「ほぉ~俺の前でよく言ったな」 新田の勉強している教科書を、手にとって 見ながら笑う。 新田もスミマセンと笑いながら、チョコンと 頭を下げた。 手の上でペンをクルクル回しながら 少し前にやった小テストのプリントを 眺めて、リスのようにプクっと頬を膨らます。 「何それ、可愛い。誘ってんの?」 ぶっと音をたてて、新田が頬から空気を 吐き出した。 「……んなわけないでしょ…ただのクセだよ。 何言ってんのこんな所で…」 新田の顔がみるみる紅くなって、 手の上で転がしていたペンが、机の下に 転がり落ちた。 二人で一緒にそれを拾おうとして 机の下で顔がぶつかりそうな距離まで 近づく。 一瞬だけ目が合い、ペンを握りしめた新田は 大慌てで立ち上がって、後ろに飛び退いた。 「…いや、逃げんの速っ!」 「……さ…殺気を感じたっ」 「勝手に感じるな! 今のは事故みたいなもんだろ。 ってゆうか意識してんのそっちじゃない? エッロ!!」 「ちっ…ち違っ!!」
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