5. 不確かな日々

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「今日は彼氏と一緒なんだ?」 進は露骨に警戒した素振りを見せ、目を反らして るのに、茶髪のその男は気にもとめず、軽い感じで 俺に向かって話しを続けた。 「ねぇ、スワップしない?」 「はい?」 男は、未成年にすら見える、幼げな見た目の 少年を連れていた。 男の後ろに隠れながら、上目遣いに媚びた目で 俺を見て笑っている。 「コイツ結構かわいいでしょ?」 男は言いながら少年の首を掴んで前に押し出し そんな扱いを受けても、少年はニコニコと笑い 続けている。 「コイツとその彼と今日だけ交換。どう?」 「今日だけ…」 言いながら進を見ると、絶対に嫌だ、と 顔で訴えてきた。 「悪いけどそんな気分じゃないんだって。 他行って」 「連れないね~ 俺すっげ~楽しませてあげる 自信あるのにな~ コイツもお兄さんとヤりたがってるのに」 少年は男の腕に絡み付いて、クスクス笑う。 酔ってるのか、薬でラリってるのか… どちらにしても、男も少年も目が普通ではない。 「俺たちもう帰るとこだったから そっちはそっちで楽しんで」 そう言って残っていたビールを飲みきって 進の手を握った。 男がしつこく何か言ってくる前に、帰ろっか?と 進に聞くと何度も首を振って頷く。 「じゃぁ またね」 そう言って男の肩を軽く叩き、進の手を引っ張って その場を離れた。 「そうちゃんカッコいい~」 進が俺の手を強く握り返してきて、肩ごしに 顔を寄せて、嬉しそうに声をひそめて囁いた。 外に出ると進が握っていた手を離して 俺とも少し距離をとって歩き出す。 一歩外に出たら、男同士で手を繋いだりしない。 暗黙のルールだ。 「ごめんね、まだ居たかった?」 進が申し訳なさそうに聞いてきた。 「そうだな…あの子は確かに可愛かったな」 俺の冗談に、進が蔑んだような冷ややかな目で 俺を見た。 「あれ、未成年じゃない? そうちゃんロリコンだったの?」 言われて新田の事が思い浮かんで、ドキッとする。 進は カッコいいって言って損した、と ぶつぶつ 文句を言っていた。
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