5. 不確かな日々

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「つきあうねぇ…」 「パーティー行かなくなったら もっと会えなくなっちゃうじゃん 毎回、なんて言って誘おうかとか いちいち考えるのも面倒だし、いっそ つきあっちゃえば楽かなって」 俺たちは今まで特別な相手を作らずに 気が向いた時に会っては、肌を重ねてきた。 なんとなく、そういう気楽な関係を続けて いくのだろうな…なんて勝手に思っていた。 「あれ?乗り気じゃないね。 結構勇気出して言ったんだけど…」 俺と並んで天井を眺めていた進が、俺の顔を 見るために横向きになって。腕と足を絡めてくる。 「俺の事…別にそんな好きでもなかった?」 「いや、俺も進の事は好きだけど……」 「けど……?」 「……俺、浮気しちゃいそうだなって…」 「………」 進は悲しそうな目で笑った。 「誰か気になってる人いるんだ?」 「いや、違うっ。特定の誰かってことじゃなく 色んな奴とやりたくなるって言うか…」 俺は目の前にちらついた新田を追い払いながら 言った。 「ガキか! いいかげん落ち着けよ」 進があきれて兄貴風を吹かせる。 「それはお前の言うとおりだよ」 「俺だけじゃ満足できない?」 「…うぅ~ん……」 「……あ、そっ! もういい」 進はクルッと背中を向けて寝てしまった。 「え、怒ったの?」 進を後ろから抱いて、揺すりながら聞く。 お互い何も着ていない肌と肌をくっつけて。 「俺、そうちゃんにとって、ちょっとは特別だと 思ってたのに…違ったんだ…」 「特別だよ。特別じゃない奴 家に泊めるかよ」 「じゃぁ何で?どうしてダメなの?」 「だからさ、上手く言えないけど…進とはずっと こんな感じで付き合いたいんだよ。 ケンカ別れとか、気まずくなったりとか… 嫌なんだ」 「………」 「ズルいかもしれないけど… 有限の関係になりたくない」 「……ズルい…」 「うん」 俺が進の耳を口に含んでそっと吸うと 進がピクッと肩を震わせる。 「そんな事言って…俺が誰かの物に なっちゃっても知らないからね その時、後悔しても……遅いんだか…ら」 進の弱い、耳の後ろに舌を這わせば うっとりとため息を吐く。 そんな事言っても進はそんな事しない。 他に男が出来ても、俺が呼べば必ず来る。 俺は、なぜだか根拠のない自信でいっぱいだった。
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