2. 誰も知らない

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新田は何も無かった事にしようとしていた。 もともと俺たちが校内で会う確率は少ない。 新田のクラスの授業に行くとき以外での 接点は、ほぼなかったからだ。 関わらないようにしようと思えば それなりに成立させる事は可能だった。 俺の方も、あの日は魔が差したとしか思えない。 新田の隠れた魅力に気づいてしまい、もう一度 あの肌に触れたいと思いながらも、 あの時撮った物で、新田を脅して、もう一度 関係を迫るほど、ゲスになりきれなかった。 そんな俺にとって、俺との関係を断とうとする 新田の行動は、願ったり叶ったりといった ところだった。 ただ… 思えばなんて酷い抱き方をしたものか…。 ゆっくり開いてもやらないで、乱暴に突き立てて おまけに中に出して放置した。 レイプと言ってもいい。 サイテーだ…。 俺は学校では、同僚からも生徒からも そこそこ人気もあるし、明るく優しい それが俺、白井 蒼佑(そうすけ)のイメージだろう。 休み時間など、生徒から“そうちゃん”なんて 呼ばれたりして。 その俺のあんな豹変ぶりを見て 心底怖かったに違いない。 ー いつかタイミングがあれば一言 謝りたい そんな風に思ってた ある日 チャンスは訪れた。 新田は図書室で1人、何かを読みふけっていた。 下校間近で、委員の生徒が図書室を閉める作業を している所に俺が滑り込んだ。 翌日の授業で使う洋書を探しに来て 1人でいる新田を見つけたのだ。 チャンスだと思った俺は、戸締まりは自分が するからと伝えて、委員の生徒を先に帰らせた。 俺が来たことに気づかないで、机に頬杖をついて 真剣な顔で本を読んでる姿がなんとも可愛い。 新田はこんなんで大丈夫だろうか? こんなに隙だらけで、俺みたいな性癖のヤツに 見つかったら、痴漢にあったり、どこかへ拉致 られたりしないだろうか? そんな事を思いながら、しばらく距離をとって 新田を観察してからゆっくり近づいた。
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