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僕はまじまじと白井くんを見てしまった。 ティッシュを取るために膝立ちになっていたので、下から見上げる形で見ていたら、白井くんの顔が真っ赤になった。 ティッシュも赤いけど、顔も赤い。 「・・・そんな風に見ないでください。まだ言ってませんでしたけど、オレは瀬名さんがオレを好きになってくれるまで、絶対に手を出さないって誓ってるんです。その宣言をする前に、オレの理性を試すのはやめてくださいっ」 そう言って、ティッシュで鼻を押さえながらトイレに駆け込んでしまった。 僕は白井くんが慌てて入っていったドアを見た。 トイレ・・・我慢してたのかな? 散々飲んでたものね。 ごめんね、気づいてあげられなくて。 しばらく待っても白井くんは出てこなくて、僕は背もたれにしていたソファからふかふかのクッションを取って横に置いた。そしてそこにパフっと倒れ込む。 頭がぼうっとして、まぶたが重い。 泣き過ぎたせいだ。 でも、それに反して心の苦しみが軽くなってる。 涙と一緒に苦しみも流れ出たのだろうか?そうだったら、それは全部白井くんのお陰だ。 僕はてっきり、白井くんは僕を責めるために来たのかと思った。だけど違った。 白井くんは責めるどころか、僕の心を救うために来てくれたんだ。 そんな彼に、僕は甘えていいのだろうか? 自分でも気づかなかったあの人への思いを気づかせてくれて、僕はそれだけでも救われたのに、その上彼を忘れることが出来るまでの間も、白井くんを頼っても良いのだろうか・・・? 心の中からあの人を消せないことが心苦しい。 でも、白井くんは自分の心を認めろ、と言った。それは今のままでいいってことなのかな。 直人を愛したままの僕でもいいのかな。 いつか、本当にあの人を忘れることが出来たら、今度は白井くんのことを好きになりたい。 そう思って気がついた。僕はあの人を忘れたあとのことを考えている。 ようやく、僕の中の時間が動き出したような気がした。 しばらくはまだ体はあの人を求めるかもしれない。でも心は・・・。 もう大丈夫な気がする。 白井くんのおかげだな・・・。 そんなことを考えながら、いつの間にか僕は眠りに落ちていった。 了
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