406人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
でもそれも終わらせなければならなくなった。
あの人に子どもができたのだ。
それを告げられた時、本当にこの関係を終わらせる時が来たと思った。
どんなに理由を付けようと、どんなに自分を正当化しようと、子どもにとって僕は悪者にしかならない。
子どもは親を選べない。
どんな親でもその子にとったら唯一無二の存在だ。
そして、生まれてくる子どもは幸せにならなくてはならない。
僕の存在は、その子にとって害悪にしかならない・・・。
・・・潮時だった。
もう自分を通すことは出来ない。
子どもは無条件に尊い存在だ。誰も敵うことは出来ない。
時間を置いてグダグダ考える前に僕は行動に移した。
その夜のうちに僕はそこから逃げた。
元々あの人が結婚した時に、一度逃げようと計画していた。その時は出来なかったけど、今度は必ず実行しなければならなかった。
そのために温存されていた計画を実行した。
僕は彼から告げられた夜のうちに、姿を消すことに成功した。
冷静に考えられる前に行動に移せたことに、自分を褒めてあげたい。
あの時、一晩でも置いてしまっていたら僕はまた彼から離れられなかったと思う。
なぜなら、一年経った今もなお彼の存在は僕の中で大きく、色褪せることなく居続けているから・・・。離れてもなお、僕を苦しめ続けているから・・・。
強制的に引っ越すことによって僕はあの人から離れることが出来たけど、体は今も彼を求める。
もしも逃げ出さなければ、未だにズルズルと関係を続けていたことだろう。そして彼の家庭を壊し、生まれてきた子どもを不幸にしていたかもしれない。
そんなことにならなくて良かった。
きっと今ごろ、あの人は生まれてきた子どもと奥さんと一緒に幸せな家庭を築いていることだろう。
これで良かったんだ。
いつまでも不毛な関係を続けているより、この方がずっといい。
誰も不幸にならなかったなら、僕はそれでいい・・・。
最初のコメントを投稿しよう!