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家具も全部処分してしまったので、すぐ住めるようにと家具付のマンションを探してきてくれて、仕事も自分のところで働けと誘ってくれた。 いくら同級生だからといって、なんの交流もなかったやつにそこまでしていいのかと僕の方が心配してしまったが、困ってる時はお互い様だろ?と、軽く返されてしまった。 高校時代真田はかなりやんちゃをしていたが、そういう奴ほど情に厚いのかもしれない。 その時かなり弱っていた僕は、そんな真田に甘えることにした。 もともと居た会社は、実は少し前に退職願を出してあったのだ。まさかこんなことになるとは思っていなかったので、すごい偶然に内心驚いた。 入社7年目のその会社はなんの問題もない所謂優良企業だったが、転勤の話が持ち上がったのだ。僕はその時はまだあの人が来るあそこから離れたくなかったので、当然転勤を断った。ただ、栄転であったためそのまま断るも受け入れてもらえず、退職することにしたのだ。 特に思い入れがあった訳では無いし、仕事等どこでも出来ると思っていたので退職にはなんの抵抗もなかった。 あの人との最後の夜、あの日が出社最後の日でそのあとは有給消化に入るはずだったので、そのまま姿を消してもなんの問題もなかった。だから尚更、そのタイミングの良さに驚いてしまう。まるでこうなることを暗示していたかのようだ。 全てのことが、こうなることは必然であったといってるみたいだ。 だから仕方がない。 早く、僕も忘れなくては・・・。 たとえ何年かかっても・・・。 もう二度と、手に入らないのだから・・・。
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