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白井くんが来てひと月が経った。
彼はすっかりここに馴染み、ママさん社員たちに可愛がられている。
仕事も覚えが早くてそつなくこなしているし、今はまだ仕事を覚えながらのサポート役だが、一人で任されるのもそう遠くない。
やっぱり前の会社が合わないって嘘っぽいよね。
でも、僕に会いに来たというのは違ったかな?
なぜなら、あれから全然僕に接触するような事がなかったから。
会社にいる間も休憩中も別段変わった様子はない。終わってからも特別誘われることもないし・・・。
僕の勘違い・・・だったかな?
だといいけど・・・。
でもそう思っていた矢先、白井くんが珍しく話しかけてきた。
「瀬名さんて、クリスマスの予定とかあるんですか?」
世間はクリスマス。
今年は週末にクリスマスが当たったので、いつにも増して盛り上がっている。
「・・・いや、特には」
予定などあるわけが無い。
一人暮らしをして以来、クリスマスに限らずイベントなどやったことは無い。
あの人とは、そんな甘い関係ではなかった。
「オレもなんです。あの・・・いつもお世話になってるし、良かったらでいいんですけど、クリスマス一緒に飲みませんか?」
僕から見ても結構なイケメンが、クリスマスを過ごす相手がいないなんてにわかに信じられなかったけど、僕はそれを受けた。
「いいけど・・・僕はお酒飲まないし、一緒にいてもあまり楽しくないよ」
いよいよ来たかと思った。
「大丈夫です。瀬名さん、お店とか苦手ですよね?良かったらうちに来ませんか?オレのうちもここから歩いて行けるところなんで、時間気にしなくて大丈夫ですよ」
人懐っこい顔でそう言うとニコニコ笑った。
この顔に他意はあるのだろうか?まるで大型犬がしっぽを振っているようだ。
でも、もし僕が思うような理由で彼がここに来たのなら、事は早く終わらせたい。
「いいよ。僕は夜食べれないから、君の好きな物用意して。言ってくれれば僕も持っていくから」
そう言うと白井くんの顔はぱっと明るくなった。
「ありがとうございます。クリスマス楽しみです!」
彼はうれしそうに言って、仕事に戻って行った。
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