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クリスマスに会う約束をしてから、白井くんは前より僕に話しかけてくるようになった。
自分がコーヒーを入れるついでだからと僕の分まで入れてくれたり、お昼を一緒にとったり。
今日もお昼、外に食べに行った隣の席に白井くんは座り、僕に合わせてコンビニ弁当を食べている。
僕はお店に入るのが苦手で、いつもコンビニで買ったものをデスクで食べているのだ。
食べるものはいつも一緒。梅干しのおにぎりとお茶だ。いろいろ試した結果、これが大丈夫だと分かったから。
「瀬名さん、いつもそれだけですよね。お腹すきませんか?」
若い白井くんはガッツリ焼肉弁当を食べている。その他にパンが二つとホットデリのひと口唐揚げが控えている。
見てるだけで胸焼けがしそうだ。
「昼はあまり入らないんだよ」
その言葉に白井くんはそうなんですか〜、と能天気に返してくれた。
本当は真田が言うほどガリガリだし、夜も食べないと言ってあるので突っ込みたいだろうけど、そこは触れてこない。
「そう言えば、瀬名さんていい匂いしますよね」
急に変わった話題に思わず隣を見ると、白井くんが顔を僕の肩口に近づけて鼻をクンクンさせた。
びっくりして思わず身を引くと、白井くんはすみませんと言って離れた。
「ごめん、くさかった?」
実はほんの少しだけ香水をつけている。ほんの少しと思っていても匂いは慣れると感じなくなるから、知らぬ間につけすぎてたのかもしれない。
「いえ、全然です。いい匂いって言ってるじゃないですか。本当に近くをすれ違わないと感じない程度ですよ」
「・・・ならいいけど、気になるようなら言ってね」
本当に自分ではもう匂いは分からない。ただ習慣でつけているようなものだ。
「なんか、あまり他では香らない匂いですね。特別感あります。この匂いで瀬名さんてすぐ分かります」
ニコニコ他意のない笑顔で言った白井くんの言葉にドキリとした。
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