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この香水はあの人と同じものだ。これはあくまでもベースの香りで、他に色々な香りが混ざることでその人独自の香りになるというものだ。他の香りとは他の香水もそうだが、シャンプーやコンディショナーなどの香りでもこの香水は香りを変える。 僕の香りはあの人と全く同じだ。 あの人は必ずシャワーを浴びて帰るから、普段使っているものと同じものをうちでも使っている。香りの変化で奥さんにバレないように・・・。 あの人から離れても僕がそれを使い続けているのは、僕が弱いからだ。まだあの人を感じていたいから・・・。 もしかして白井くんはこの香りで・・・。 やっぱり白井くんは、僕が誰だか分かっているんだね。 僕は隣を見た。 お弁当を食べ終えてパンの袋を開けていた白井くんは、僕の視線に気づいてニコッと笑った。 その顔を僕は知っている。 彼女は同じようにニコニコ笑ってあの人の隣を歩いていた。幸せオーラ全開に、当たり前のように腕をあの人のそれに絡ませて。 偶然見かけた幸せな夫婦の姿に、僕の心臓は押しつぶされそうになった。 その彼女と同じ顔の彼が僕のところに来た。 「いよいよ明日ですね。瀬名さんがうちに来るのすごく楽しみです」 僕の心の中など分からない白井くんは、相変わらずニコニコと笑っている。 「そうだね。明日は残業しないようにするよ」 僕は覚悟を決めた。 明日どんなことが起こるか分からないけど、僕はそれを受け止めなくてはならない。 あの人の奥さんにとって、僕はそれだけの事をしたんだから。 僕は決して、被害者では無い。 たとえそれが自分の望んだことでなくても、誰かを傷つけたという事実には変わりないのだから・・・。
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