2

14/16
前へ
/31ページ
次へ
でもそうやって心にフタをしてしまったから、直人と離れた途端苦しくなった。 心と体が直人を求めたのに、認めたのは体だけ。心の方はその思いに目を瞑り、欲求にも気付かないふりをした。そのため、バランスを崩してしまった。 苦しいだけの離れてからの一年。 ただただ辛かった。苦しかった。 僕はなんのために生きてきたのか、そんなことすら見失っていたような気がする。 何故こんなにも苦しかったのか。 考えたこともなかったその答えを白井くんが教えてくれた。 その答えを僕が認めることによって、僕の中で何かが変わるような気がした。 白井くんは僕の思いを理解し、受け入れてくれた。 でも僕の心は・・・。 ひとしきり泣いて顔を上げると、その気配を感じて、白井くんは腕を緩めてくれる。 僕はこの腕に甘えていいのだろうか? 僕を好きだと言ってくれている彼に、縋ってもいいのだろうか・・・? 「・・・僕は白井くんの思いに答えられないよ?」 泣きすぎて少しかすれた声。ちゃんと言葉になっただろうか? 白井くんはこんなに優しくて、僕を好きだと言ってくれるけど、僕の心はまだ直人を思っている。 そんな都合よく彼に頼ってもいいのだろうか・・・? 「分かってます。瀬名さんがまだ直人さんを思ってるって。本当は、あなたの心の中の直人さんが消えて、そこに自分が入れたらいいななんて甘い考えで来たんですけど、間近で見たあなたのあまりの憔悴ぶりに、心の中にはまだ直人さんがいるって分かりました」 白井くんはそっと体を離し、向かい合うと僕の手を取って両手で包んだ。 「こんなに痩せてしまって、この一年、どんな思いで過ごしてきたのかを思うと、やるせなくなりました。なんでもっと早く見つけてあげられなかったのかと、自分が情けないです」 手の中の僕の手を、優しくさする。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

432人が本棚に入れています
本棚に追加