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「きゃっほーッ! 御清聴ありがとー諸君!」 「わぁー! 葎花上手〜、パチパチパチ!」 「はいはい」 「おお…… 取り残されてた俺と居た時よりテンションめっちゃ高いんだけど?」 「いやまぁ俺達所詮美子が誘ったついでだし仕方ねぇよ」 戻って来ると亮介が寂しい思いをしていたらしい。 まぁ男ひとりじゃそうなるわな、俺も同じ立場だったら少し心細いし。 「玄ちゃ〜ん!」 「うおッ!?」 「へぇ〜」 「あら〜」 美子は宮野を連れて俺の座ってる席の方へ来たので宮野が端に寄り俺もそっちへ詰めると俺の隣に座った。 「玄ちゃん、これ歌おうと思うけどどうかなぁ?」 「へ? あ、ああ。 いいんじゃないの?」 みんなの前でそうやって近付いて来られると恥ずかしくて”どうかなぁ?”なんて聞かれても全くそっちに気が行かないんだけど…… 速水達を見ればニヤニヤとこちらを見ているし亮介はお前だけズルいぞみたいな目で見てくるし。 「よし!」 「何がよしなんだ?」 亮介が立ち上がった。 何をするかと思えば速水達の方へ座った。 「なんで篠田がこっち来るわけ?」 「そ、それは……」 何やらヒソヒソと速水達と話している。 「あははッ! そういう事ね、仕方ないなぁ〜」 「お、おお…… 木村サンキュー!」 あっちはあっちで固まってしまった。 なんか済まん木村…… それとヤケに宮野がソワソワしている。 「どうした宮野?」 「と、と、ととッ……」 「トイレか? あれ? 行ってきたばっかだったような気が」 「え…… ? あ、う、うん。 トイレ」 そしてまた宮野は部屋から出て行ってしまった、その様子を見て速水達とついでに涼介まで口をあんぐりとさせ俺を見ていた。 「げ…… 玄ちゃん…… 隣行きたいって言いたかったんだよ」 なん…… だと? 「玄ちゃん……」 「は、はい……」 「天然か玄ちゃんは!?」 「そ、それお前が言うか?」 「まったく…… これだから由比ヶ浜は。 美子も珍しく怒ってるわよ」 「お、俺なんかやっちゃったか?」 「ダメだよ玄ちゃん! トイレに1人で行くのは寂しいからそこは一緒に行こうって言わないから!」 え? そうなの? 「「「は?」」」 今度は美子を見て速水達は何言ってんの? と言う顔をする。 「いやお前も充分天然だろいッ! ねぇ琴」 「まぁ美子だもんね」 「ええ〜ッ!?」 「玄! お前俺の言った事忘れたのかよ?! とにかく追い駆けろ」 「そうだよ玄ちゃん! 私も行こう!」 「し、仕方ないな」 まるで霊王宮に登ったり降りたりしている気分だ。 部屋を出てまたトイレに向かうとやっぱり居ない、中に入ってるな。 「ほら、行こうよ玄ちゃん」 「バカ! 男の俺が女子トイレに入れるはずないだろ!?」 「うわわッ! そ、そうでした。 てへへ」 美子はトイレの中へ入って行ったがすぐに戻って来た。  「遥ちゃん居ない…… どこのトイレに行ったんだろう?」 ていうかトイレに居なかった時点でトイレじゃないような気もするけど? どこのトイレってのがもうズレてる…… もしかして帰ったか? でも流石に何か言って帰るよなぁ。 「どこかの隅っこに居るかもしれないから手分けして探そう!?」 「隅っこって…… そうだな」 美子は他の部屋を覗きながら店内を隅々回り始めた。 それ部屋の中の人から見たらかなり怪しいからやめろよな?  俺は店内に居ないような気がしたので店から出て店の裏側に行ってみた。 すると…… 「げ、玄君!? どうしてここに?」 「お前が居なくなるから…… どうしてここに? ってのは俺のセリフなんだけど。 やっぱり嫌だったのか?」 「ううん、それは………… 私が意気地なしだから。 進もうと思うといつも逆に戻ってて。 でも、でも! 今日は進めたの、美子ちゃんのお陰で。 でも私はダメだ……」 頭に亮介の言葉が過ぎる、宮野は俺を好きかもしれないって言葉が。 けど違ったら恥ずかしいしそういう事だったらもっと恥ずかしいしどっちにしろ恥ずかしい、中学生だぞ俺ら…… 「玄君…… また私を見つけてくれたね、えへへ。 あ、ごめん、迷惑掛けといて笑う所じゃないよね」 「まぁ迷惑とかはともかく友達が急に居なくなったら探すだろ」 「…… うん、友達………… 私は今玄君のお友達!」 「え? ああ友達だ」 宮野は何か言いたげだったがニコリと笑った。  そして手分けしていた美子が居ないので部屋に戻っているのかと思いきや戻ってはいたのだが速水に説教されていた。 なんでも他の客から部屋を覗いている変な人が居ると言われ店員に注意されたらしい。 「玄ちゃーん! 助けてよぉ、琴音が怖い」 「当ったり前じゃない恥ずかしい!」 「ごめんなさい、私のせいで」 「遥にも原因はあるけど美子の行動もおかしいせいもあるからおあいこね」 「酷いよ琴音のバカバカー!」 「でも遥見つかって良かったねー?」 「わわわッ」 美子と速水をかき分け亮介の肩に手をポンと置いてそう言った木村に亮介は照れていた。  そんな時宮野は俺の後ろに体半分隠した。 「どした?」 「う、ううん、やっぱり美子ちゃんって面白いなって」 あー、美子に悪いと思って笑いを堪えてるのか。
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