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「お、おはよう玄君」
「おう、おはよう」
勉強会の日になり待ち合わせの駅に行くともう宮野は来ていた。 クラスメイトの女子とこうして休日に会うなんていつ以来ぶりかあまりにも俺にはなかった事なので少し緊張する。
それにこんなとこ他の奴等に見られたらなんて言われるか…… いやいや、こうやって会うのに別に変な意味はない、ただ勉強するだけだ。 宮野が俺の事をどう思うとかいちいち気にすんな。
「玄君……」
「ん?」
「今日は来てくれてありがとう」
よく宮野を見ると宮野らしいと言うか主張少なめの出で立ち。 厚いセーターにレギンス、そしてダッフルコートで防寒バッチリだぜみたいな格好。 まぁ俺も適当だし。
「ああ、でも美子の奴は来てないみたいだな?」
「美子ちゃん1番早くに来てたんだけど何か忘れ物したみたいで私が来た途端慌てて戻って行っちゃった」
「なんだそれ? まぁ美子らしいけど」
「…… 玄君って凄く美子ちゃんと仲良いよね? いいなぁ」
「凄く? いや凄くか? 俺とお前小中同じなのに俺がそんなに女子と仲良くなれそうに見えるか?」
「あ、ううん」
アッサリと否定された。 おい、結局凄く仲良いは建前か?! そこはお世辞でもそんな事ないよくらい欲しいところだけど別にいいけどさ。
「でもお前も美子と友達になってんじゃん? 俺と変わりないだろ、寧ろ女子同士だし美子も宮野の方が話が合ってやりやすいんじゃないの?」
「美子ちゃんとは仲良くなったけど……」
つーかそう思うと亮介も誘えば良かった、男俺1人ってなんか辛い。
「あ、居た居た! ここだよー、まったくー!」
美子の声がする方向を向けば一際可愛い女の子が…… って美子だけど。 こいつも防寒対策バッチリしてますという感じで美子はグレーのカジュアルコートにスキニー、スノーブーツとパッと見て宮野と同じく派手ではないけどそれでもどこか華があるように見えるのは雰囲気か。
あまり目立ちたくないのに大声出しやがって。 それにまるで遅れて来たのが俺達みたいに振る舞うなよ……
「よう」
「お、おお……」
「え? なんか変か?」
「あ、いや、なんでもないよ」
俺と宮野を交互に見て少したじろぐ美子の後ろから小さな影が。
「姉ちゃんケツで押すなっての!」
「あ、ごめんねナオちゃん」
「ナオ…… ちゃん?」
「紹介するね! こちら私の弟のナオちゃんでーす!」
「あッ! ええと、宮野遥です、はい……」
「…………」
宮野を見てサッと直也は無言で美子の後ろに隠れた。 俺と初めて会った時と同じリアクションだ。
「あれぇー? ナオちゃん、お姉さんに挨拶は?」
「姉ちゃん、この人って玄兄ちゃんの彼女?」
「ふえッ!? わ、わわ、私は玄君のお友達で、か、彼女だなんて」
「違うぞ!? そもそも俺らはまだ中学生で」
「そうだよナオちゃん! 私達お友達同士なの!」
「ええー? 違うの? うちのクラスのヒロトとマオちゃんは付き合ってるよ?」
いきなり何言い出すんだこいつは!? まさか美子が俺と宮野を見て一瞬たじろいだのはそう見えたからか?
「もう、ナオちゃんったら!」
「姉ちゃんと玄兄ちゃん遅れてる〜!」
「早けりゃいいってもんじゃねぇっての!」
「そうそう! 性格の不一致とか女癖の悪さとかお金遣い荒いとかいろいろあるんだからね!」
「いや、小学生に何そこまで言ってんだ?」
「じゃあそこの人と玄兄ちゃんは付き合ってないんだ? だってさ、姉ちゃん」
「わ、私!? 私に何か!!?」
「むぐおッ!」
美子は直也の口を慌てて塞いだ。 まったく何がしたいんだか……
「そっくり……」
「そっくり? まぁ美子の弟のだもんな、そりゃ似るだろ」
「え? 見た目もそっくりだよ?」
そう言われて試しに直也の髪の毛を手で隠して美子と見比べるとあらビックリ、本当だ。
「確かにそっくりだな……」
「ええ!? 今頃?」
「やめろよな玄兄ちゃん! こんなのとそっくりとかって!」
「ああーん! こんなのって酷いよナオちゃん! 私ナオちゃんの事相当可愛いと思ってるのに!!」
相当可愛いって…… そっくりって言われると自我自賛しているようにしか思えないんだが。 まぁこいつはアレだからそんな気毛頭ないんだろうけど。 てか駅には数人しか居ないけど確実に目立ってる。
「揃った事だし行くか?」
「ん? あ、そだね! 遥ちゃん行こう?」
「うん」
図書館はこの駅から数分歩いた所にある。 というか美子はなぜに弟を?
「美子、今日は直也を連れて来てどうしたんだ?」
「それがさー玄兄ちゃん、むぐぐッ!」
「うん?! だって私達仲良いから!」
「…… その割には直也の口を遮るんだな?」
「あ、あははは! 遥ちゃんってやっぱり可愛いね!」
「え!? み、美子ちゃんいきなり何を…… わ、私なんて可愛くないよ」
なんかすげぇ強引に話を逸らしたぞ?
「そんな事ないよ、琴音も言ってたし遥ちゃんお目々大きいし鼻も高いしちょっと長めな前髪切れば…… あ、えーと、うん! 可愛い」
なんで褒める所で詰まってるんだよ! そんな褒め方だと宮野だって微妙な…… と思えば宮野は下を向いている、よく見れば耳が真っ赤だ。 もしかして照れてるのか?
「宮野?」
「んあッ! は、はい!」
「だ、大丈夫か?」
「う、うん! ごめん。 私そういうの言われるの慣れなくて…… しかも美子ちゃんからだし」
「え? 私だと何か?」
「お前なぁ…… 面と向かって言うのはなんか俺も恥ずかしいけどお前ってうちの学年で物凄く可愛い部類に入るだろ? だから…… え? 美子?」
今度は美子まで両頬を手で押さえて顔を真っ赤にさせている。
「わ、私が!? げ、玄ちゃ…… えっとそう思われてるって事? やだなぁ〜えへへへ」
もっと斜め下な反応するかと思いきや普通に照れ臭かったのかバシバシバシと美子は俺の背中を叩いた。
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