口溶けの恋心

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その夜、久方ぶりに触れた異性は、優しくて温かかった。 奈美の求めていた言葉を与えてくれる斗馬。なんてこと無い日常を一緒に丁寧に楽しむ。 奈美は、まだ臆病から抜け出せないながらも、今度こそ共に歩めるパートナーかもしれないと思い始めていた。  斗馬の宣言通りの過ごし方をした週末。心も体も軽やかに奈美は月曜を迎えた。 仕事へのやる気パワーも漲っていた。次の週末も一緒に過ごし、斗馬との付き合いは順調だった。 今週のクリスマスイブは平日だがどうしようかとメールでやり取りしていた矢先、奈美は聞いてしまった。 社食でのこと。丁度、斗馬に返事をしようとしていた奈美の耳に聞こえてきたのだ。 「えー、合コンセッティングしてもらったのー?いいなー。新人研修のあのイケメングループでしょう?」 「そー、森田くん!みんなカッコよかったー」 「沙織ばっかりずるいー。ホテル行ったんでしょ?」 「聞いてよー。ラブホじゃないの!ちゃんとシティホテルなのー」 「きゃー、やだー。ちょっと声大きいから」
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