16人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて、もうひと仕事」
奈美は飲み終わったカップを捨て、デスクに戻った。
デザイン部の部屋には、数名しか残っていない。急ぎでない限り、残業は最大でも二時間と決められていて、定時上がりを推奨されているからだ。
実際は納期に間に合わせるために、残業せざるを得ないのが現状だ。
「お疲れ様です。これ、チェックお願いします」
藤崎麗奈が月曜のプレゼン資料を奈美に手渡した。
藤崎は、既にコートを身に着け帰る気満々だ。
今日は金曜日。藤崎には仕事の忙しい恋人がいて、会える週末は、貴重なのだと聞いていた。
早く帰りたかっただろうが、仕事はきちっとするタイプなので終わった途端にそわそわしているのが見て取れ、奈美は微笑ましく感じた。
「ありがとう。確認しておくわ。直しがあれば月曜の朝お願いね。お疲れ様」
一目散に帰るかと思いきや、藤崎はまだ何か話すことがあるらしい。
「あの、三分、いえ二分お話いいですか?」
奈美は不思議に思いながら、どうぞと促した。
最初のコメントを投稿しよう!