口溶けの恋心

4/20
前へ
/20ページ
次へ
「森田さんをご存知ですよね。創作和食『Q二郎』の店舗デザインで関わっている空創工藝社の森田さん」 「ええ、もちろん。空創工藝社の倉持さんのアシスタントの子でしょ?」 奈美が関わっている現在進行形の仕事のうちの一つは、創作和食『Q二郎』の店舗デザインを請け負っている空創工藝社からの依頼で、店のロゴや名刺、割り箸の袋に至るまでデザインを考えている。 先日、顔合わせと店のイメージを確認する名目で打ち合わせをしてきたところであった。 「そうです。その森田さんが高木さんと飲みたいと申してまして」 「打ち合わせの時、飲みに行ったわよ?」 「その後、個人的に誘われませんでした?」 そういえば、森田とは沿線は違ったが同じ駅の利用だったため、倉持と別れた後、一緒に駅まで歩いた。 その時に『この後もう一杯どうですか?仕事の話抜きで』と誘われた。 奈美は早く帰って、その時聞いた店のイメージをまとめておきたかったのと、社交辞令的なお誘いだと思い、丁寧に断った。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加