口溶けの恋心

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森田斗馬(もりたとうま)という男、新人のくせに物怖じせず余裕綽綽としていて、自分に自信があるのが見て取れた。 半年ほど前、他社と合同の新人研修会で、藤崎と同じチームだったため、森田と藤崎は繋がりがあるのだろうが、それならなおのこと、誘われる要素は皆無であった。 その時の懇親会で奈美は、藤崎の先輩として同じチームのテーブルに着いたのだが、藤崎に対して辛らつな発言をしてしまったのだ。 森田は、それを目の前で見ている。疲れが溜まっていてすきっ腹に飲んだため、酔いがまわったのと、藤崎を恋愛優先の仕事を疎かにする人間だと決め付けて厳しくあたった。 婚約者を取った女、遠山瑠奈(とおやまるな)藤崎麗奈(ふじさきれいな)。瑠奈と麗奈で、名前も似ていれば、容姿の雰囲気も似ていた。そのせいもあり、私的な感情が入ってしまったことは否めない。 色素の薄い猫毛のロングヘアー。パッチリ二重の気の強そうな大きな目。ヒールの高い靴を履くところまで似ていた。 藤崎が遠山とは違うということは、その後すぐわかるのだが、森田たちの前で奈美がおかした失態は消えるわけではない。
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