口溶けの恋心

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奈美は、ヒステリックな上司のレッテルを貼られたに違いないと思っていた。失態は仕事で挽回するしかない。奈美は、益々仕事に邁進していた。 そんなわけで、森田から個人的に誘われるなどあり得なかった。 ましてや二十二歳の若者。この間まで学生だったのだ。奈美にとっても全くの恋愛対象外であった。 「社交辞令的には誘われたけど……」 「ええ?社交辞令?違います。それ本気だったらしくて、この間から私にセッティングしろって煩くて」 「森田さんが……?」 「自分で言えと断ったんですけど、一回断られているから、私から頼んでくれと言われて。聞くだけ聞いてみるけど断られたら諦めるように言ってあるので。どうしましょうか?」 「どうって……」 「なんかですね、内装が素敵な和食のお店を予約してあるらしく、今日の七時半に来て欲しいそうです」 藤崎は、自分の携帯の画面を見せた。 会社近くに最近オープンした、奈美も行ってみたいとチェックしていた店だった。奈美は日本酒に目が無く、一人でも飲みに行く。
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