口溶けの恋心

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「お疲れ様です。森田さん、今日はお誘いありがとうございます。ここ一度来てみたかったんです」 「だと思いました。前にお店の内装に興味あるとお話しだったので。あと、日本酒も。奥にどうぞ」 森田は、奈美を奥に座らせた。向かい側に座ると思われた森田は、奈美の右手側の下座に座った。 広いテーブルの角に二人。 「他にどなたかいらっしゃるのですか?」 「いえ、僕だけですよ。初めはビールにしますか?」 特に座り方に気を止めていない様子の森田。 「ええ。ビールお願いします」 乾杯し、仕事の進捗状況など話した後は、八寸と日本酒でテンションがあがり、話も盛り上った。 年齢は五歳違うが、森田と奈美は興味のあるものが似ていた。デザイン的なものが好きで、持っている物が被っていたり、チェックするお店も似ていた。 自分のために日本酒を買って帰り、それに合う料理を作るところも同じだった。 いつの間にか『斗馬』『奈美さん』と呼び合う頃には二人とも酔いが回っており、終電の時間も迫っていた。
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