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どうやらこのクリスティーン、昨年からの常連客のようだ。おユキちゃんはクリスティーンの返答に興味を引かれたのか、いよいよ完全に手を休めるとクリスティーンが座っている席の隣へと腰を下ろした。
それを見ていたもう一人の客である男性が声を投げてくる。
「おユキちゃん、手ぇ、止まってるで? 大丈夫なん?」
「う、うるさいですわ! ナカさん! この後はナカさんにも質問致しますので、覚悟していてくださいですわ!」
おユキちゃんは関西訛りの男性客であるナカさんへ、焦った様子で返答する。それを聞いたナカさんは、軽く肩をすくめるのだった。
おユキちゃんは身体ごとクリスティーンに向き直ると、
「どうやって、このお店をお知りになられたんですの?」
おユキちゃんは常連客がどのようにしてこの『喫茶 ねこまた』を知り得たのか、興味津々の様子だ。
このおユキちゃん。
この三人の中ではいちばんの新顔なのだ。
おユキちゃんは今年の春、父親にこの『喫茶 ねこまた』へと連れてこられた。その時、この店の店主に一目惚れをしてしまったおユキちゃんは、その日から毎日お店に通ったのだ。
そうして一ヶ月が過ぎた頃、おユキちゃんの財布の中身を心配した店主がおユキちゃんを女給として雇うことに決めたのだった。
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