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「あのね。私、メインに昇格したの。もしマシューが受かったら私がサポートするわ」
「凄い!おめでとう! 」
彼女の薄くそばかすの浮いた鼻に軽くキスをする。
ソリを誘導するオペレーターには的確な判断力が求められ、一人のサンタに対してメインとサブの二人がサポートに付く。
猛スピードで進むソリが事故を起こさないように、障害となる建物や大木を素早く見定め方向を指示する。
分割表示されたモニターにはソリの現在位置とリアルなサンタの映像、次の目的地がカラフルな点で示され、状況に応じて画面を切り替える。
25日の0時から陽が昇るまでインカムを付けてモニターと睨めっ子だ。
「まあ、何れはメイン担当になれると思ってたけど、早く上がれて良かった」
「クイン、君はちゃんと夢を届ける仕事に携わっているのに俺は全くダメだ。30歳までにオーディションに受からなかったら諦めるよ。間抜けだからオペレーターは無理だし。今までやってきたのは精々プレゼントのラッピングくらいさ」
クインは項垂れるマシューの瞳を下から覗き込んだ。
「私も実はサンタ役目指して入社したって知ってた? 」
「そうだったの?女性の君が? 」
驚いて顔を上げる。
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