拝啓、サンタクロース殿

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エピローグ 5年後 「ママ、サンタさんにお手紙書いて~!シホはくまさんほしい!って。 「うん、書くよ~ちょっと待ってて。」 あれから私は、コールセンターの同僚と一緒に参加した隣町の工場に勤める男性との合コンで、今の夫と出会い、結婚し娘が生まれた。就活もそうだったが、結婚も決まるときはあっけなかった。出会いから娘が生まれるまで、まるでそうなることが決まっていたかのようにスルスルと進んだ。そして育休復帰後も時短でコールセンター勤務を続けている。最初は細かい業務マニュアルに眩暈がしそうだったが、何とか覚えてクレーム対応もこなせるようになり、産休育休の制度も整っていたので、娘が小さい今も家庭と両立できている。あれ以来クリスマスが苦手になってしまったことは事実だが、娘はサンタさんからのプレゼントを心待ちにしている。素知らぬふりをして、娘のためにクリスマスの準備をしていた。 「シホ、書いたよ!封筒入れて、ツリーの下に置くね。」 「あれ?封筒2コあるよ?」 「これはママからサンタさんにだよ。」 「ママ、サンタさんに何お願いしたの?」 「お願いじゃないよ、ママもサンタさんにプレゼントもらった事あるからお礼を書いたの」 「じゃあサンタさん喜ぶね!」 「拝啓、サンタクロース殿 五年前のクリスマス、私はあなたに最悪なプレゼントをもらいました。 でもそれは今になってわかります。私には必要だったのだと。感謝しています。ほんとうにありがとう。 敬具」 完
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