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キッチンからは、焦げた匂いとパチパチという音、お出しのいい香りとトントントントンとリズミカルな包丁の音が聞こえる。
うむ。これがパンケーキを作る工程ではないのがよくわかる。
が、結の様子と言うと。
ルンルンと楽しそうに鼻歌を歌い、両手で指揮をしている。
それくらい朝ごはんが楽しみなのか、それともパンケーキが本当に来ると信じて待っているのか……これはもう妄想っ子というより、アホの子なのかと思ってしまいます。
そんな結の頭の上に熱々の日本茶が入ったコップをポンっ乗せる結母。
「あーっついよ。お母さん! 折角、ハワイにいる気分を味わっていたのにヒドイよぉ!」
結は涙をためウルウルとした目で母をみる。
結母はニコニコしながら、フワっとゆっくりな口調で結に話しかける。
「結、現実を見なさい。ここは日本よ。朝ごはんと言えば、白いお米とみそ汁とお魚でしょう。あ、納豆を忘れていたわ」
結母はパタパタとスリッパの音を鳴らしながら、冷蔵庫に向かう。
「あ、そうだわ! ルカくんが出ているドラマがはじまっちゃうからテレビをつけてちょうだい」
「お母さんも物好きよね~あんなお子様のどこがいいんだか」と言いながらもテレビをつける結。
「ルカくんはお姉さまキラーだから、まだお子様の結には魅力がわからないのね。あんな子がうちの息子だったらってみんな言っているわ」
「はいはい。おこちゃまなんでわかりませんよ」
結母こと佐糖鈴は目が開いているところをみたことがないくらいにいつもニコニコとしており、良く言えばフワフワとしたゆっくりで優しい喋り方、悪く言えば非常に眠くなる喋り方をする女性である。
喋り方からわかるようにホンワカした優しい人で、少しお茶目な部分もあったりする。
最近、お姉さまに大人気のルカという14歳の男の子にハマっている。
ルカの話はまた後程に。
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