お掃除をしていたら幸せになった、片付け下手なOLさんのおはなし(1)

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お掃除をしていたら幸せになった、片付け下手なOLさんのおはなし(1)

「ない、ない、見つからない」  佳苗(かなえ)さんは、散らかり放題の部屋を見て頭を抱えてしまいました。お部屋の鍵が見つからないのです。せっかくお出かけするつもりで準備していたのに、戸締りができなければ外出なんてできません。 「確かに昨日テーブルの上に置いたはずなのに」  テーブルの上をひっくり返してみても、どこにもありません。  コートのポケットを探しました。  見つかりません。  カバンをひっくり返しました。  見つかりません。  アクセサリーケースも確認しました。  見つかりません。  玄関の下駄箱の上も、洗面所も、ベッドの下も、洗濯機や冷蔵庫の中だってのぞいてみました。  やっぱり見つかりません。  まったくもっておかしいのです。  いくら佳苗さんの部屋が散らかっているとはいえ、普段使うものくらいは決まった場所に置いています。忽然と、神隠しのように姿を消すはずがないのです。そうたとえば、いたずら好きの妖精さんがこっそり隠してしまったりしない限りは。 「お掃除妖精さんめ。家が散らかっていても別に死にはしないじゃないの」  文句を言いつつ、佳苗さんは腹をくくりました。可愛らしいワンピースを脱いで、汚れても良い格好に着替えます。長い髪もひとつにまとめて、ピンでとめました。ついでとばかりに窓も開けて、換気もばっちりです。 「さあて、やりますか」  誰に聞かせるでもなく宣言すると、佳苗さんは腕まくりをして大掃除を始めることにしました。
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