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今月も、私の営業成績は良好だ。
私の評価は課内で、上昇気流に乗りつつある。
直属の上司である、憧れの吉岡先輩からも「流美さん、最近頑張ってるね」と天にも昇る言葉を貰え、その日、私の心は浮き足立っていた。
そうして、接待を終えた夜10時、たどり着いた私のマンションのポストを開けると、瞬時に見知らぬ香りが鼻腔に広がる。何故?と思いつつ中を覗くと、そこには、白い小さな箱が入っていた。
……なんだろう?
不思議に思いながら、部屋に持ち帰った箱の中からは、良い香りがする。
喩えるなら、ちょっときつめのローズ系パフュームみたいな、そんな匂い。
ちょっと怖かったが、私は酔いさめやらぬ胸に湧き上がる好奇心に勝てず、そーっと箱の蓋を開けた。
……箱の中に入っていたのは、つるんとした黒い石鹸だった。
匂いの正体はこれかぁ……。
道理で良い香りがポスト中に、匂い立っていたわけだ。
それは、今までに嗅いだことのないような、上品で華麗な香りだった。
……とはいえ、誰からとも知れぬ物を、ましてや肌に直接擦りつけるものなど、使える筈はない。
いったい、誰からだろう。
私は、多少気味悪く思いながらも、その箱ごと、石鹸を思い切りよく、屑箱にほおった。
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