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車を走らせながら、湯川はぼんやりと考えていた。
迷い、遠回りし、行き止まりで引き返し——なんとか自宅の駐車場までたどり着いた時、ようやく気持ちの落とし所を見つけたのだった。
あらゆる問題は残されているが、まずは自分の気持ちをちゃんと彼に伝えよう。
この連休中に、どこかで会えるだろうか。
とりあえず、部屋に入ったら電話をかけてみるか。
階段を登りながら、そんなことばかり考えていたせいか、通路を占拠する段ボールが視界に入らなかった。
気づいたのは、部屋までだいぶ近づいた時で、湯川は軽く悲鳴をあげそうになった。
子どもが入りそうなぐらい大きな段ボールが、部屋の前に3つほど積まれている。
通販をした覚えなどないし、実家から荷物を送ったという連絡も、特に受けてはいない。
怯んで立ち尽くしていると、段ボールの影から、人の頭らしきものが動いているのを捉えた。
瞬間、湯川はすべてを理解したのだった。
近づくと、案の定——そこには、ドアの前に膝を抱えて座っている瀬戸内の姿があった。
「なにしてんの!?」
声を張り上げると、瀬戸内はたじろぎながらも、とりあえず笑みを繕った。
少し暑いぐらいの陽気なのに、湯川が貸した、あの青いパーカーを着ている。
「マンションの更新、切れちゃった」
それは知っている。
先ほど、この目で確認済みだ。
湯川は彼の横に積まれた段ボールを見上げてから、瀬戸内に視線を戻した。
「……だから?」
「ここに置いて」
あまりに唐突な要望を受け取ると、湯川は驚きを通り越して脱力してしまった。
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