食うか食われるか

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小鳥のように舌先を突き合う。 口を開いたまま、うっとりと顔を紅潮させた瀬戸内は、それだけで湯川を追い詰めるのだった。 胸を刺激しながら何度か深く突き上げると、瀬戸内はシーツを握り締めながらすすり泣いた。 「いく、あ、いく……っ」 そして予告通り、体を震わせながら達した。 「胸と後ろだけでいったの?」 「ん……」 放出したばかりで、頭がぼんやりしているらしい。 しかし、体は収縮し、湯川の欲求を搾り取るように、締め付けてきた。 「ごめん、俺もいってい……?」 耳打ちして、ラストスパートをかけた。 さっきシャワーを浴びたのに、気づけば汗まみれだった。 「ん、あっあ————」 ぶつかる瀬戸内の肌も、しっとりと湿っている。 「湯川君、好きだよ……すきっ」 耳元で言われた瞬間、湯川はあっけなく絶頂を迎えた。 痙攣が治ると、体を繋げたまま、彼の上にのし掛かった。 「あー……」 湯川は瀬戸内の首筋にうっすらと悔恨のため息を染み込ませた。 まだ持続できたはずなのに、不意打ちで思わず達してしまった。 「どうしたの?」 瀬戸内が聞いてきても、湯川は答えず、彼の鎖骨にぐりぐりと顎を押し付けてやった。 まさか、こんな日が来るとは思わなかった。 背後から声をかけられるたび、体をびくつかせていたあの頃には——想像すらできなかったのだ。 湯川は彼の横に寝そべると、やや乱暴に抱き寄せた。 「なんでこんなに可愛いんですかね」 乱暴に言い放つと、胸元で息を呑むような気配がした。 「もうまじで、俺だけにしてくださいよ」 言うと、瀬戸内はやはり顔を押し付けたまま、何度も頷いた。
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