醜い騎士と光を失った姫

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「1匹目のワー・ウルフと、2匹目の伝説の蛇女は何とかあろうが……最後のヒュドラは余程の覚悟が無ければ倒せまいよ。 俺も、伝説蛇女の呪いを幾ばくか受け、こうして今でもじわじわと石化されているのだ……ヒュドラには右腕を喰われた……這う這うの体で帰った俺を王は騎士から免じた……それでも恩給があるので喰ってはいけるがな……。」 先輩騎士はそう言うと言った。 「魔女の力は全く分からんが、ヒュドラは3本の首……いや、今は何本か……? それぞれに噛み付く……一つの首の懐に飛び込んでも他の首に噛み付かれる……ここは考えどころだ。」 「何か策は……?」 「餌だよ……牛の生肉を目の前に放り出せ、さすればヒュドラの首は先を争って食らう筈だ、そこを逃さず撃つが良い……。 そしてここからが重要だ……。」 先輩騎士はそこまで言うと、唯一動く右腕でカップに酒を注ぐと呑みながら淡々と話を進めた。 「若いの……儂が話せるのはここまでだ。 魔女の力は知りようもない……若き勇者に神の御加護があらんことを……。」 騎士の脳裏に先輩騎士との会話が蘇った。 ペレルがなおも先を進み続けると岩肌に洞窟があった……ペレルは松明に火をともし中へと入った。 しばし歩くと急に開けた場所に現れた……そこにはヒュドラがいた……ヒュドラは9本の首を持っていた。 ペレルはバック・パックから牛肉の塊を取り出すと、ヒュドラの前に投げた。 ヒュドラの首は争う様にその肉に食らいついた。 ペレルは片手にバスタード・ソード、片手に松明を持つと、餌に食いつくヒュドラの首を片っ端から切って落とした。 『若いの……ヒュドラの偽首は斬ると倍になって生える……それを防ぐにはその切り口を焼くしかない……。』 ペレルの脳裏には、先輩騎士が語った言葉が過っていた。
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