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「この命、愛しい姫に既に捧げた……恐ろしいものは何一つとしてない。」
そして、ペレルは続けて言った。
「もしや、貴女は……。」
「女王の姉さね……妹の奸計で女王候補から外され、今はこうして魔術書を読むのを日課としている世捨て人さ。」
魔女はそう答えると悲しそうに笑って続けた。
「やっと、あいつに復讐できたのだ……私から全てを奪った妹の、たった一人の娘の光を奪うことでね。」
「満足ですか?」
ペレルの言葉に魔女は言った。
「ああ、満足だね……そして、仮にお前が宝玉を持って帰ったとしても、楽しい事になるかもだねぇ……。」
魔女はそう言うと、炎を指さした。
「ごらん、あの炎の中に宝玉が入った箱がある。
炎に焼かれる覚悟があるならば取り出してみよ……。」
魔女の言葉にペレルは頷くと言った。
「愛しき者への想いの力……御覧に入れる。」
ペレルは躊躇せずその火の中に両腕をいれた。
熱で腕が焼ける音がしたがペレルは諦めなかった。
その腕はゆっくりと炎の中に浮かぶ箱に近づいていった。
ペレルは前身を炎に晒してその箱をつかみ取った。
炎の中からその箱を撮った時、ペレルの両腕は焼けただれ……前身も焼けていた。
魔女は言った。
「あんたは、本当に馬鹿だよね……その身を焦がすまでの価値があるのかい?あの姫は……。」
魔女はそう言うと、ペレルの手を取った。
「価値とかの問題ではありません、御察し下さい。」
ペレルはそう言うと、魔女に微笑み……爛れた両手の指で宝玉の入った箱をゆっくりとバック・パックに収めた。
魔女はその姿をただ、じっと何事かを考えるかの様に見詰めていた。
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