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それから半月後にペレルは乞食同然の成り立ちで王宮に戻った。
醜い顔は炎で焼けただれ、伝説の蛇女やヒュドラの呪いと毒に侵されたペレルは名と、騎士の身分を示す割符を示さなければ門番も分からないほどであった。
王は、直ちに謁見して言った。
「騎士ペレルよ、貴官の功績は誠に大である。」
王は、ペレルより宝玉の入った箱を受け取り、中身を確認すると笑って言った。
「下がって宜しい……。」
ペレルがなおもそこで片膝をついて畏まっていると、王は思い出したかのように言った。
その表情は先ほどの笑みと真逆だった。
「お前の様な化物に姫はやれん……下がれ、下郎。」
ペレルはその言葉に頷き……王の前を辞した……。
その日、ペレルは意気消沈として宿舎へ戻った。
普段呑まない酒をグラスに数杯呑みベッドに横になって考えた。
そうだ……所詮は高根の花だったのだ姫は……そう思うと王の言葉に浮かれていた自分が情けなくなった。
落ち窪んだ目から涙がこぼれた。
諦めなくては……あわよくば姫を自分の妻になどと言う分不相応な考えを持ったこと自体が恥ずべきことだったのだ。
ペレルはそう自分に繰り返し言い聞かせた。
体中は戦いの傷で酷く痛んでいた……ペレルは起き上がると薬を塗り、もう一度ベッドに横たわると思った。
良いではないか……あの愛しき姫に光を取り戻せたのだから、それが想い人への騎士たるものとしての務めだ、ペレルはそう自分に言い聞かせた。
それでも何故か涙は止まらなかった……。
多少体の傷が癒えた頃、ペレルはローブをまとい、顔を布で隠して市場へ買い物に出かけた。
足を引き摺り歩くペレルを、行き交う人々は忌まわしいものを見るかのような視線を浴びせた。
「おい、ペレル……。」
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