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急にペレルは呼び止められた。
声のした方を振り返ると家の塀に背を預けて、あの魔女が座っていた。
ペレルは訝しげに魔女に近寄った。
魔女は持っていた杖でペレルを指し示すと笑って言った。
「愛しき姫君はどうした?ものの見事に騙されたようだの。」
魔女の言葉にペレルは名にも言わず、そのまま立ちすくんだ。魔女はなおも言った。
「所詮お前は、言いように使われただけのお人よしだ、私の使い魔が得た話では、女王は娘が光を取り戻したことで、早速姫を南の帝国の皇太子に嫁がせようとしている。
ペレルよ、様は無いな……己だけ貧乏くじを引いたのだぞ。」
魔女の言葉にペレルは言った。
「姫がそれで幸せならば宜しいのでは?私はあくまでも王家に仕える騎士……そして姫の幸せをただただ願う者……それ以外に言葉はありません。」
ペレルの言葉に、魔女は立ち上がるとペレルの傍に近づき言った。
「それにしてもひどい傷だな……ここに薬がある、なに心配には及ばんさ、これでも私はお前という道化を買っているのだ、心底馬鹿正直で心底愚昧なほどに真面目でそして不相応な想いを抱く哀れな道化にな。」
魔女はそう言うと、包帯が巻かれたペレルの手を取り、薬の入った小瓶を渡した。
「効果は、絶大だぞ……傷も癒えよう、そしてお前の心がまだ純粋ならば奇跡を起こすかもしれぬなあ…もっともそうなってくれればここの王家は上へ下への大騒ぎになろうて……そうなってくれればこんな痛快事は無い。」
魔女はそう言ってにこりと笑うと、杖を振り上げたと思った瞬間……その場から消え失せた。
ペレルの手には薬瓶が残った。
ペレルは魔女のいた方に深く会釈をするとまた、歩き出した。
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