2010年12月25日

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「田中くんはこれからデートとか?」 「ううん、僕も暇だしクリスマスセールでも漁ろうかと」 「いいなあ。私これ全部売らなきゃ帰れないんだ」 「え、これ全部?」  ショーケースの中のケーキを指差しながら田中君は驚く。  いや流石にこれ全部は冗談だけど。……冗談ですよね、店長?   「じゃあさ」  彼は唐突に言った。 「もしもここにあるケーキ僕が全部買ったら、一緒に遊びに行ってくれる?」 「え」  この人は何を言っているんだろう。「そんなことできるわけないのに」と思った直後に「でもそれってどういう意味?」「全部でいくらになるんだろ?」「田中くん甘党だっけ?」と次々と思考が追ってきて、混乱した私は言葉を失った。 「えっと、それは」 「もちろん大丈夫です! お買い上げありがとうございまーす!」 「店長!」  私の代わりに勢いよく返事をした店長は満面の笑みを浮かべた。 「ほらほらケーキ全部売れたから、真里ちゃん今日は上がって!」  勢いそのままに店長はぐいぐいと私をバックヤードへと押しやる。 「……ほんとに良いんですか」 「いいのいいの。若者がクリスマスにこっち側にいちゃダメでしょ。――まあでも、その代わり」  そして店長はニヤリと笑った。 「来年のクリスマスケーキはうちで予約してよ?」  彼女のその優しさに、私は唇を噛んで覚悟を決める。 「一番おっきなケーキ予約します!!」 「予約承りました~。ほら、いっといで!」  笑顔で肩をポンと叩かれ、私はもう一度お礼を言って更衣室に駆け込んだ。  
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