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1998年12月25日
クリスマスは、怪しい。
『知ってる? サンタさんって実はいないんだって』
私はベッドの中でクラスメイトの美香ちゃんの言葉を思い出す。
『だってサンタさんって煙突から入ってくるはずでしょ? でも、うち煙突ないもん』
『うちもだ……』
『しかも玄関にはカギがかかってるし。ほら、サンタさんが入ってこれるわけないよ』
名探偵ばりの推理を見せる美香ちゃんに私は何の反論もできなかった。
『じゃあ、いつもプレゼントくれるのは誰なの……?』
『それは自分の目で確かめたら?』
そんなわけで私はサンタさんの正体を突き止めるべく見張りをしていた。ふかふかの布団があったかくて欠伸が出るけど我慢だ。
寝たふりをしながらちらりとドアを覗き見るが、サンタさんはまだ現れない。
その時、かちゃりとドアが開いた。
「真里、もう寝たか?」
なんだ、おとうさんか。もう紛らわしいなあ。
「うん。寝たよ」
「そうか」
そして静かにドアは閉まった。まったく、作戦の邪魔しないでよね。
そのまま私は外が明るくなるまで見張りを続けたが、もう誰も現れなかった。
――翌朝。
私がリビングに行くと、そこにはプレゼントが置かれていた。
「え、なんで」
「朝からそこにあったぞ」
驚いている私に、おとうさんはニュースを見ながら言う。
プレゼント箱の包装紙を開けると、私がサンタさんへのお手紙に書いた『ラビットファミリーの山のお家セット』が現れた。
私はそれを見て、プレゼントをぎゅっと抱き締める。
「……ありがとうございます」
結局サンタさんが誰なのかはわからなかったけど。
正体を暴こうとした私にまでプレゼントをくれるんだから、きっとすごくいい人だ。
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