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私は首を捻ったが「いいからいいから」と野田くんは半ば強引に私をメリーゴーランドの馬に乗せた。睫毛パッチリで得意げな笑みを浮かべている馬だ。
「俺は乗らねえけどな」
「えっ!?」
その声に顔を向けると、野田くんは鉄柵の外にいた。
柵はもう閉まっており「それでは、いってらっしゃーい!」と笑顔で手を振るスタッフの一声で、私の乗った馬はゆっくりと動き出す。
もう戻れない。私の乗る馬は上下しながら、遊園地の全景を見せる。
そして一周して、夜に立つ彼の姿が現れた。
「俺は!」
野田くんは叫ぶ。
その時、私は初めて見た。
彼の真剣な表情を。
「おまえが好きだ!」
メリーゴーランドは二周目に入り、彼が視界の端から途切れても。
その言葉は、はっきりと聞こえた。
そのまま馬は回って、もう一度彼が現れる。
私は力いっぱい叫んだ。
「ばーか!!」
「いや、ばかってなんだよ!」
その言葉と共に彼はまた見えなくなる。
……回れ、メリーゴーランド。
もっと回れ。
口元を押さえる両手に白い雪が乗る。
あのスノードームのような、眩しい光の粒が降り注ぐ夜に私は願った。
お願いだから、止まらないで。
――まだ、どんな顔したらいいかわかんないから。
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