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2006年12月25日
クリスマスは、痛い。
『……おかけになった電話番号は、現在電波の届かないところにあるか、電源が』
私はその聞き飽きた声と台詞を最後まで聞かずに通話終了のボタンをタップする。
もう何度目だろうか。私はスマホで彼からのメッセージを表示させた。
3時間前に届いたシンプルな文章。
『やっぱり今日は行けない。ごめん、別れよう』
何かがあったわけじゃない。
ただ、私たちには何も起こらなくなっていた。落ち着いた関係になったのだと私は思っていたけど。
そんな穏やかな毎日に彼は飽きてしまったのだろう。
『なんか、楽しくなくなってきた』
ある日の、その言葉がきっかけだったと思う。
それを境に彼は少しずつ表情のレパートリーを失っていった。
私が今遊園地の入場ゲートの前に立っているのは、昔の彼を思い出したかったからだろうか。
少し前に閉園した遊園地の周りにはもう誰もいない。ライトを消して色を失くした遊園地は分かりやすく「終わり」を体現している。
――メリーゴーランドは、止まってしまった。
冷えきった白い手を擦る。痛い。
腕時計を見ると、23:45を示していた。
……遠回りして帰ろう。
家に着く頃には、日が越えているはずだ。
私はモノクロの遊園地に背を向けて。
冷たい夜をゆっくりと歩き出す。
クリスマスが終わるまでは、泣きたくなかった。
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