25人が本棚に入れています
本棚に追加
1994年12月25日
クリスマスは、おいしい。
「おかあさん、ケーキたべていい?」
「ん、いいよ。お父さん遅いみたいだし」
おかあさんの返事に私は喜んでダイニングの椅子に座る。
テーブルの上には、雪みたいに真っ白な生クリームと宝石みたいに真っ赤なイチゴのケーキ。クリスマスは誕生日以外でケーキが食べられる素敵な日だ。
しかも晩ご飯には大きいお肉も登場する。なんておいしい日なんだろう。
「いただきます!」
私は早速目の前のケーキにフォークを刺した。3本の金属がゆっくりとスポンジに沈んでいく。
「真里」
「ん?」
「クリームついてる」
「んむ」
少し遅れて椅子に座ったおかあさんが私の唇に触れる。優しい人差し指が私の口の端に付いた白いクリームを掬った。
「ケーキおいしい?」
「うんっ!」
私が力いっぱい返事をすると「ふふ」とおかあさんは笑う。
「メリークリスマス」
その言葉の意味はよくわからなかったけど。
おかあさんが嬉しそうだったから、私も嬉しくなって笑った。
最初のコメントを投稿しよう!