スケッチブック

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飾ってるドライフラワーはレンタルで 1週間に1度、定休日の前日の閉店後に契約してる業者さんが来て、希望通りの装飾をしてくれる事になっていた。 今日はそのドライフラワーの入れ替えの日。 21時に閉店して、すぐに業者さんがやって来た。 田中さんという、私よりも少し歳上な感じの すごく人当たりの良さそうな、優しい雰囲気の人がこの店の担当。 「今日はどんな感じにしますか? 」 頭にタオルを巻きながら、私に話しかける。 「今回はこんな感じにしたいと思うんですけど……。ほんのちょっとだけ変えて貰って、後は同じ感じで」 スケッチブックに色鉛筆で描いた 私のイメージした店内の絵を見せる。 ドライフラワーの色や、配置なんかを 初回も思った通りに装飾してくれた田中さんは 私の絵を暫くジッと見つめ 「分かりました。 この感じに近付けるようにやってみますね」 そう爽やかに笑い 「それにしても絵、上手いですよね。 ……それにセンスが良い」 スケッチブックの絵を、まだマジマジと見ながら言われて、ちょっと照れる。 それがお世辞だとしても、褒められる事は苦手。 銀座のクラブで働いてたのに この褒められる事には結局慣れないままで 顔が赤くなるのが自分でも分かる。 「そんな真剣に見ないで下さい。 恥ずかしいんで」 そんな私を見て、田中さんはクスっと笑い 「なんか可愛いっすね」 何気なく言われた言葉に ちょっぴりドキッとしたけれど すぐ近くで、こちらを見てニヤニヤ笑うヨウさんと目が合って、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。
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