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スケッチブックに描いた絵の通りに
店内にドライフラワーが飾られて行く。
変更点がさほど多く無かったから
作業は1時間もかからずに終了。
暑い季節に合わせて、少しでも清涼感を、と
紫、青、白を中心に彩られた店内。
「こんな感じでどうっすか?
絵に近付けたかな、と思うけど」
田中さんが私の隣に立って、店内を見渡す。
素人が描いた絵を再現出来る
さすが、これぞプロの仕事。
「……想像してた以上です。
ありがとうございます」
「ホントに? はぁ……良かった」
ふぅっと息を吐いて
田中さんは頭に巻いてたタオルを取った。
.
外に停められたバンに
回収したドライフラワーや、道具を乗せ終えると
田中さんは運転席に乗り込む前に、見送る私の所へと歩いて来て
「……今度は客として来ても良いかな」
そう微笑む。
「あ、はい。もちろんです。
その時はコーヒー、サービスさせて貰いますね」
「え? いやいや、それはいいよ!
ちゃんと金払って飲ませて貰う」
慌てたように手を振って言うから、少し笑ってしまう。
去って行く田中さんの車を見送って
また店へと戻ったら
いつも通り、掃き掃除をしてたヨウさんが
「ありゃあ、絢ちゃんに惚れてるね。
間違いないわ」
ふざけたような顔でそんな事を言うから
「冗談は顔だけにしてよね」
そう言って、私も店の片付けを始めた。
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