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今日も店を出た時間は23時過ぎ。
私とは反対方向に帰るヨウさんと、店の前で別れて歩き出す。
歩き出して数歩
道路の反対側に停まってた車のドアが開くのが視界に入って、自然とそこへ目を向けたら
見覚えのある車に心臓がキュウっとなって
そして降りて来た人を見て
足を止めた。
……あの車は藤井さんがずっと乗ってた車だ。
私の記憶に
まだ消える事なく残ってる。
車から降りて来たのは
この前のあの人……藤井典幸。
通りを行く車の間をすり抜け
軽く走りながら
私のいる道の反対側へと渡って来た。
「明日、店定休日でしょ? 」
会って第一声がそれ。
「……そうですけど……」
「じゃあ、遅くなってもいいよね」
「え? 」
何を聞き返す間もなく手を掴まれ
また、通りを行き交う車をキョロキョロと見渡し
車を停めている反対側へと走り出すその勢いに、何故だかその手を振り解けないまま
車のヘッドライトの明かりの隙間を、彼と二人で走り抜けた。
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