470人が本棚に入れています
本棚に追加
「調べたら、親父が付き合ってた女があんただけだって分かってさ。
そんな女なら、オレも興味湧くじゃん」
………待って。
私だけ……? 今、そう言ったの?
藤井さんには他にも女の人なんて、沢山いるんだと思ってた。
『自分にも他に女がいるし、
だから絢も自由に恋愛したら良いよ』
出逢った頃に、確かに藤井さんは私にそう言った。
なのに……そんな事聞いちゃったら
私、どうしたらいいか分からなくなる。
視線をアスファルトの上へと落とした私に
「あれ? どうした? 睨むの止めちゃって」
投げられる意地悪な言葉に
瞬きを数回
そしてまたその目を見た。
「ん? 買われる気になった? 」
私の反応を楽しんでる顔。
世界が全部自分中心に回ってて
叶わない事なんて無い
私の事なんてモノ扱い。
こんな人、好きじゃないけど
大ッキライだけど
その目にふとした瞬間
優しかった藤井さんが見えるようで。
あの関係は、恋や愛じゃないと思っていたのにね。
「……私は高いですよ」
私より少し高い場所にある目を見たら
フッと笑う。
「いいね。………いくら? 」
「──3000万」
カフェの開業資金の倍の額。
そんな金額を口にした。
最初のコメントを投稿しよう!